よしなしごと

よしなし‐ごと【由無事・由無言】つまらないこと。益のないこと。たわいもないこと。とりとめもないこと。

休みを取って、若冲展・釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会相国寺承天閣美術館へ。

目的はもちろん『動植綵絵』。三の丸尚蔵館での展示の時は、上京するチャンスがなく、あきらめていただけに、今回の相国寺への里帰りは釈迦三尊像との再会も含め、たいへんうれしい企画でした。プライスコレクションは確かにすばらしかった。けど、これを見ずしては若冲を見たとは言えないという思いがずっとあったので、ほんとうにほんとうにこの日を首を長くして待っていたのでした。

そして、ようやく会うことのできた作品は、一つ一つ見ていくと、花びらの1枚、鳥の羽1枚、雪のひとひら、ひとかたまりが、実に精密に華麗に美しく描かれて(描き分けられて)いて、ため息が漏れるばかり。そして、一通り見終わって、釈迦三尊像を中心として両側に15幅、少し距離を置いて改めて見回したとき、自分でも不思議だったんだけど、とても豊かで楽しく暖かい気持ちになったのでした。それはきっと若冲もこれらの作品を充実した気持ちで、とても楽しみながら描いたからではないかと。左右の15幅ずつがそれぞれ対になっているのを順に組み合わせながら見ていくのも心躍るひとときでした。

で、やっぱり一番イキイキと描かれているなあと思ったのは、30幅のうち、鶏が主題になっている8作品。それらは今にも「コォーッ、コッコッ」って鳴き出してエサをついばみ始めそうな勢い。中には絵の題材にはしないようなポーズをとってる鶏もいるんだけど、鳥を飼ったり眺めたりする人にはすぐにわかることだけど、鳥って人間ではあり得ないユニークなポーズをするでしょ。そうそう、鳥ってこんなポーズするよね、っていう。そういうのを若冲はきっと温かいまなざしで見つめていたんだろなあ。そんな想像するだけでもとても親しみを感じてしまうし、鳳凰や孔雀、金鶏など力の入った作品もあるけど、はやり身近で見たり観察していたであろう鶏に関してはその生命力の輝きが作品からあふれ出てくるようなのでした。

ちなみに、30幅のうち、鳥が登場するのは23幅(上記の鶏8作品含む)もあるので、どこにどんな鳥がいるのか、とか、他にも面白い発見がいろいろできるので、そういう楽しみ方をしてみるのもなかなかでは、と思います。

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tsun的には、『老松鸚鵡図』が一番のお気に入りであります。

若冲がこの作品を作成したのは、43歳〜51歳ごろ、と言われていて、この時は同時に別の大作にも取り掛かっていたそうだから、「脂がのって」、精力的に仕事をしていた時期なんだろう。たしかにこの作品にかける情熱のようなものものが静かに伝わってくる。寺の存続のために宮内庁に渡った『動植綵絵』だけど、今回相国寺に里帰りが出来て一番喜んでいるのは若冲かもしれないなあと思ったことでした。