よしなしごと

よしなし‐ごと【由無事・由無言】つまらないこと。益のないこと。たわいもないこと。とりとめもないこと。

「彼女はよくがんばったじゃないか。それだけでもオレは満足。だから今年は浪人でいいと思ってるよ。」

テツは受話器の向こうで、余裕綽々の口調で言った。なにさ、大人ぶっちゃって。ひとりで泰然として。置いてけぼりをくったような焦燥感を感じつつも、落ち着いたその言葉を聞いた時、わたしの不安はほんの少しだけ小さくなったのだった。志望校を絞り、出願を終えた今、あとは「天命を待つ」のみ。進学するにしても、浪人するにしても、成功とか失敗とかじゃない。どちらの道でもきっとアクアを成長させてくれるんだろうと思う。

そんな風に気持ちを落ち着けてきたんだけれども。。。。

この前の日曜日。テツはひとり手酌で焼酎がずいぶん進んだらしい。よっぱらって電話をかけてきてぽつりとつぶやくように言った。

「一体、どうなるんだろうなぁ…」

悟りきったようなことを言ってても、やっぱりテツにも不安があったんだな。その瞬間、気持ちを分かち合えたような気がした。そして、ほんの少しほっとした。けれど、せっかくの静かだった心が、またざわざわと波立ち始めたのであった。