よしなしごと

よしなし‐ごと【由無事・由無言】つまらないこと。益のないこと。たわいもないこと。とりとめもないこと。

激寒の1日。季節が逆戻りしたかのように大量の雪が降った。大学では二次試験(後期日程)をやっていた。なんともまあ受験生に過酷な天候。

和泉市久保惣記念美術館で買ってきた『源氏物語手鏡研究』を読んでいると、興味深いことが書いてあった。

久保惣本源氏絵は、石川忠総が中院通村に依頼して作成されたもの。この中院通村というヒトは、1615年に二条城で徳川家康源氏物語の講釈をしたんだそうだ。その講釈は大成功だったようで、通村の源氏物語解説者としての地位を確立することになった。武家や公家との交流も広がり、やがて、源氏絵作成のコーディネーターとして、さまざまな源氏絵の作成にかかわっていく。詞書は公家の能筆家に、絵は土佐派の工房に、というように。そのうちのひとつが久保惣源氏となると、この作品をこの世で目にできるのも家康のおかげといえなくもない…。

家康への講義に先立ち、通村は、先輩学者に教えを請うたり、もっと適任者がいるのに、どうして自分のようなものが…という重圧を感じていた*1とのこと。なんてったって、相手は家康! 名誉なことであると同時にそのプレッシャーは相当なものだったろうな。身がすくのも当然のことで、いかにも血の通った人間らしくて、親しみを覚える。誰だって最初から第一人者じゃないし、そこ至るまでにはたくさんの努力があったんだなあと思う。

また、家康というヒトも、政治のことばかり考えているんじゃなくて、源氏物語の勉強をしていたというのがうれしいじゃないですか。きっと論語とかも勉強してたんだろうけど。源氏物語光源氏の華やかな恋愛遍歴を描いている作品のような印象を持っているヒトが多いと思うけど、それらは勢力争いと密接に結びついていて、政治的駆け引きの面から読んでもたいへん読み応えのある作品である。特に、光源氏と政敵でもあり親友でもあった頭中将との関わりは物語前半の大きな柱にもなっている。家康がそのあたりをどう受け止め感じたかは知る由もないけれど、きっと源氏物語のすばらしさは感じてくれていたはず…と思った。

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晩御飯は、サーモンソテー、コールスローサラダ、クリームシチュウ(昨夜の残り)。

*1:彼の残した日記にそういう記事があるらしい