よしなしごと

よしなし‐ごと【由無事・由無言】つまらないこと。益のないこと。たわいもないこと。とりとめもないこと。

娘と、和泉市久保惣記念美術館へ行く。

この美術館は和泉市立なんだけど、この地で綿織物業を営んできた「久保惣」という会社がコレクションと共に建物敷地などを寄贈して開館したものという。当時の代表者は久保惣太郎というかた。久保惣・太郎かと思ったら、久保・惣太郎が正しい区切り方であった。

今回の目的は、源氏絵。土佐光吉晩年の作(1612年)、「源氏物語手鏡」全80枚のうち60枚を展示するというもの。全部を見ることはできないんだけど、欠落なく80枚揃っているのはコレクションとして秀逸。状態もよく、着物の柄、部屋の屏風の絵柄、庭に植えられた植物、登場人物の表情や髪の毛の一筋などが、色紙のサイズのなかに細密に描かれているのは息を呑むような美しさであった。単眼鏡を持参するのを忘れてしまったのが悔やまれる…。

面白かったは、

  • 源氏絵では「若菜」では、たいてい、幼い紫の上が雀の子を逃がしてしまってぐずっていて、それを源氏と惟光が垣間見している、というシーンが描かれることが多いのだけど、あえてこのメジャーな部分を避け、北山で養生している源氏が描かれているの。
  • 原作にかなり忠実に描かれているのに、所々違う点があるところ。たとえば、女童であるはずの場面なのに、男の子だったり、女君たちが持つ楽器が異なっていたりなど。絵師たちはかなり原作を読み込んでいるはずなのに、あえてそれと相違した内容で描くのは絵師としてのこだわりなどがあったのだろうか? 全図を収録した図録を買ってきたので、おいおい解説などを読んでみようと思う。

やはり、これだけのまとまった数を見ると、絵を眺めているだけで物語が頭に浮かんでストーリーに浸れるという楽しさがある。昔のお姫様はこんな贅を尽くした作品をお嫁入り道具のひとつとして持たせてもらっていたのであろう。

さて、いよいよ4月22日からは「大絵巻展京都国立博物館」が始まる。詳細を見ると、展示の入れ替えがあるようなので、いつ訪れるかによって見られる作品が変わるのだけれど、これだけは見ておきたいのは、五島美術館蔵の紫式部日記絵巻。かの二千円札のデザインに使われた有名な部分がやってくる。ほかには、信貴山縁起絵巻鳥獣戯画伊勢物語絵巻(これは久保惣からの出品!)など、国宝重文ばかりの充実の内容なので、ほんとうに楽しみだ。

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晩御飯は、クリームシチュウ、冷しゃぶサラダ。